ヤフーニュースによると、政府与党は16日、消費税のインボイス制度における小規模事業者の負担軽減措置(いわゆる2割特例)について、見直し案を示しました。
本来、2026年10月以降は、
現行の「8割控除(納付2割)」から「5割控除(納付5割)」へ引き下げられる予定でした。
しかし今回の案では、
2026年10月から2028年9月までは「7割控除(納付3割)」とする
とされています。
本記事では、仮に「7割控除(以下、新制度)」が適用された場合に、消費税の負担がどのように変わるのかを整理します。
結論から述べると、もともと簡易課税制度を選択する予定だった方も、新制度とどちらが有利かを改めて判断する必要があると考えられます。
なお、分かりやすく説明するため、本来の消費税の厳密な計算方法とは異なり、簡略化した計算で説明します。
それでは、本記事に移ります。
現行の「2割特例」とは
まず、現行の2割特例について整理します。
免税事業者がインボイス発行事業者となり、課税事業者になった場合、
売上にかかる消費税額のうち2割を国に納付すればよいという特例です。
例えば、売上に含まれる消費税額が1,000円の場合、
1,000円 × 0.2 = 200円
が納付税額となります。
新制度になるとどう変わるのか
当初の予定では、2026年10月以降は「5割控除(納付5割)」となる予定でした。
この場合、売上に含まれる消費税額が1,000円であれば、
1,000円 × 0.5 = 500円
を納付する計算になります。
しかし今回の見直し案では、「7割控除(納付3割)」にとどまります。
つまり、同じく消費税額が1,000円であれば、
1,000円 × 0.3 = 300円
が納付税額となります。
当初予定と比べると、国に納める消費税額は2割分軽くなることになります。
このため、2026年10月以降に簡易課税制度を選択しようとしていた事業者は、
本当に簡易課税が有利かどうかを見直す必要があるといえます。
簡易課税制度とは
簡易課税制度とは、売上にかかる消費税額から、業種ごとに定められた「みなし仕入率」による控除額を差し引いて、納付する消費税額を計算する制度です。
今回は、新制度・2割特例・簡易課税の有利不利を直感的に比較することを目的としているため、
この「実際に納める割合」を用いて、
売上にかかる消費税額 × 各制度の納付割合
という簡易的な目安の式で説明します。
代表的な割合は次のとおりです。
- 第1種事業は、売上にかかる消費税額の1割
- 第2種事業は、売上にかかる消費税額の2割(現行の2割特例と同じ割合)
- 第3種事業は、売上にかかる消費税額の3割(新制度と同じ割合)
- 第4種事業は、売上にかかる消費税額の4割
- 第5種事業は、売上にかかる消費税額の5割(当初の制度と同じ割合)
- 第6種事業は、売上にかかる消費税額の6割
当初予定どおり「5割控除(納付5割)」となった場合、
簡易課税の第5種事業と同水準です。
そのため、第4種事業や第5種事業では、簡易課税の方が有利になるケースが多いと考えられていました。
しかし、新制度では「7割控除(納付3割)」となるため、簡易課税の第3種事業と同水準になります。
この結果、
・第4種事業(飲食店、加工業など)
・第5種事業(サービス業など)
については、簡易課税を選択しない方が有利になるケースが増えることになります。
簡単な計算例で比較
例として、飲食店(第4種事業)で売上が11,000円(うち消費税額が1,000円)の場合を考えます。
ここでは、売上に含まれる消費税額1,000円を基準に比較します。
①簡易課税(第4種)の場合
1,000円 × 0.4 = 400円
②2割特例(2026年9月30日まで)
1,000円 × 0.2 = 200円
当初予定の制度(5割控除)の場合
1,000円 × 0.5 = 500円
そして、新制度(7割控除)の場合
1,000円 × 0.3 = 300円
これを比較すると、
2割特例(200円)< 新制度(300円)< 簡易課税(400円)< 当初予定(500円)
という順になります。
当初の制度を前提に簡易課税を検討していた方は、新制度を前提に見直す必要があることが分かります。
見直すかどうかの判断方法
見直すかどうかは、次のように考えます。
前年に2割特例を適用している場合、
その適用期間内(個人事業主の場合は2026年中)に簡易課税の届出書を提出すれば、
2026年から簡易課税を適用することができます
(消費税法附則〈平成28年3月31日法律第15号〉第51条の2第6項)。
そのため、期の直前に判断することも可能です。
個人事業主の場合、2026年は次のようになります。
2026年1月から9月までは2割特例、
2026年10月から12月までは新制度(7割控除)が適用されます。

仮に売上が前年と大きく変わらない場合、納付税額は、
1月から9月までの消費税額合計 × 0.2
+
10月から12月までの消費税額合計 × 0.3
で概算できます。
例えば、小売業(第2種)で、
1月から9月までの消費税額合計が30,000円、10月から12月までの消費税額合計が10,000円であれば、
30,000円 × 0.2 = 6,000円
10,000円 × 0.3 = 3,000円
合計で9,000円となります。
これを簡易課税制度(第2種)で見た場合には、
(30,000円+10,000円)× 0.2 = 8,000円
となるため、この例では簡易課税を選択した方が有利になります。
このように(本記事の簡易計算では)、
特例を適用した場合の納付税額と、簡易課税を適用した場合の納付税額を比較し、どちらが小さいかを一つの判断基準とすることになります。
新制度が適用される場合、納付割合は「2割」と「3割」となり、当初予定されていた「2割」と「5割」を前提とした場合と比べて、制度間の差は小さくなります。
そのため、目安としては、第2種事業以上に該当する事業であれば簡易課税の方が有利となる可能性があり、それ以外の場合には新制度の適用を検討する、という整理も考えられます。
もっとも、これはあくまで簡易的な比較による目安にすぎません。
原則どおり、売上にかかる消費税額から仕入れ等にかかる消費税額を差し引いて計算した結果、その金額の方が小さくなるのであれば、そもそも特例を使わない方が有利になるのはいうまでもありません。
なお、簡易課税制度選択届出書を提出している場合には、2割特例と簡易課税のいずれかしか選択できない点にも注意が必要です。
また、2027年以降は、新制度と簡易課税のどちらが有利かを、シンプルに比較して判断することになります。
おわりに
2026年のインボイス制度は、期の途中で特例の割合が変わるという点が大きな注意点です。
特に、簡易課税を検討している方や、
2026年10月以降も事業を継続する予定の方は、
事前にシミュレーションを行うことが重要になります。
判断に迷う場合は、
早めにお近くの税理士へ相談することをおすすめします。
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本記事は、2025年12月17日時点で入手できる情報をもとに作成しています。コンテンツの正確性・完全性についていかなる保証も行いません。サイトの内容を利用して生じたいかなる損害についても、当方は一切の責任を負いません。ご利用は利用者ご自身の判断と責任において行ってください。
参考:
ヤフーニュース
インボイス、特例控除7割に 免税事業者からの仕入れで 政府・与党
国税庁
2. 「2割特例」後に簡易課税制度を選択する場合
消費税法附則〈平成28年3月31日法律第15号〉第51条の2第6項



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