個人が開業したときに、早めにやっておきたいこと

個人開業届

開業直後はやることが多く、税金の手続きが後回しになりがちです。
ここでは、開業して間もない個人事業主の方が、税金の面で早めに検討しておきたいことをまとめました。

大きく分けると、次の3つです。

1.税務関係の届出
2.日々の記録のための準備
3.税理士の探し方

それでは、記事の方へ

目次

税務関係の届出

最低限、検討しておきたい手続きは次のとおりです。

①個人事業の開業・廃業等届出書
②所得税の青色申告承認申請書
③青色事業専従者給与に関する届出書
④源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
⑤適格請求書発行事業者の登録申請(インボイス)

①は原則として提出します。②以降は状況に応じて判断します。
提出した書類の控えは、必ず分かる形で保存しておきましょう。

個人事業の開業・廃業等届出書

個人事業を始めたことを税務署に知らせるための書類です。

融資の申込みや事業用口座の開設時に求められる可能性が高いため必ず電子で提出しましょう。

紙で提出した場合は、受付印が押されないため、提出の証明として使いにくくなっています。
電子で提出すれば、以下のように受付日時や受付番号が記載されたデータが残るため、提出の証明として利用できます。

※受付日時と受付番号は仮の物です

提出期限は、原則として事業を始めた年の確定申告期限までです。(所得税法第229条 ※1)

所得税の青色申告承認申請書

確定申告で、一定額を差し引ける特典(10万円や65万円など)を受けるための手続きです。

ただし、特典を受けるには、日々の取引をきちんと記録し、一定の形式で帳簿を作成する必要があります。帳簿づけが難しい場合は、通常の申告方法(白色申告)を選ぶことも検討しましょう。

税理士に依頼する場合は、帳簿の作成も含めて対応してもらうケースが多いため、申請を行い、この特例の適用を受けることを検討しましょう。

提出期限は、一定の場合を除き、原則として事業開始から2か月以内です。(所得税法第144条)

青色事業専従者給与に関する届出書

青色申告を選び、家族に給与を支払う場合に必要な手続きです。

白色申告の場合でも、配偶者は最大86万円、15歳以上の親族は最大50万円まで所得から差し引くことができます。そのため、「家族に100万円程度の給与を支払いたい」という理由だけで青色申告を選ぶと、帳簿作成の負担が増えるため、無理に選択する必要はありません。

なお、家族に給与を支払う場合は、配偶者控除などは使えなくなりますので注意が必要です。

提出期限は、開業日または家族に給与を支払うことになった日から2か月以内です。(所得税法第57条第2項)

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

従業員に給与を支払う場合や、税理士などの専門家に報酬を支払う場合には、支払う金額の一部をあらかじめ差し引き、その分の税金を代わりに国へ納める必要があります。

通常は、差し引いた月の翌月10日までに納めます。
この手続きをすると、年2回の納付にまとめることができます(一部の報酬を除きます)。

通常の納付期限
その月に支払った分 … 翌月10日

特例を使った場合
1月~6月に支払った分 … 7月10日
7月~12月に支払った分 … 翌年1月20日

提出期限はありませんが、提出した翌月以降に支払う給与などから適用されます。提出した月の分は通常どおり翌月10日までに納付が必要です。(所得税法第217条)

適格請求書発行事業者の登録申請(インボイス)

インボイス制度が始まったことにより、取引先から「登録事業者になってほしい」と求められるケースが増えています。

開業時点で売上が少なく、本来は消費税を納めなくてもよい場合でも、取引の都合で登録を検討することがあります。

適格請求書発行事業者になるにあたり、注意点が2つあります。

一つ目は、「消費税課税事業者選択届出書」は提出しないようにしましょう。
インボイスの登録だけであれば、「適格請求書発行事業者の登録申請」を提出するだけで課税事業者になります。

誤って「消費税課税事業者選択届出書」を提出すると、別途「適格請求書発行事業者の登録申請」も必要になるほか、一定額以上の事業用資産を購入した場合には、少なくとも3年間は免税事業者に戻ることができません。

二つ目は、インボイス登録をすると、原則として登録日の属する年を含めて2年間は取りやめができません。
年の途中で登録した場合は、実質的に3年近く免税事業者に戻れないこともあるため、登録日は慎重に検討しましょう。

登録日は、次のいずれかを選ぶことができます。(消費税法第57条の2第2項)

① 希望する日(その日の15日前までに申請が必要)
② 事業を開始した日の属する年の1月1日

すでに開業している免税事業者の方は、②のみ選択できます。

 

※1 令和8年1月1日施行分より開業から1か月以内の規定はなくなっています。

日々の記録のための準備

確定申告に備えて、売上や経費を日々記録するために、あらかじめ準備しておきたいものは次のとおりです。

パソコン

帳簿をつけるためには、パソコンはほぼ必須です。

スマートフォンでも確認や撮影はできますが、入力や修正の作業は効率が悪く、時間がかかります。
事業を始めたら、できるだけ早い段階でパソコンを用意しておきましょう。

また、税理士に記録作業を依頼する場合でも、データの確認や共有を行う場面があります。パソコンがあった方がスムーズに対応できます。

会計ソフト

売上や経費の記録は、事業を始めた日から行う必要があります。

確定申告の時期になってからまとめて入力すると、大きな負担になります。また、時間がたつと、請求書やレシートを見ても「何のための支出だったのか」が分からなくなることがあります。

インボイス登録をして消費税を納める立場になると、消費税の計算も必要になります。エクセルで管理することも可能ですが、手間がかかり、計算ミスの原因にもつながります。

そのため、事業開始時から会計ソフトを導入し、日々の記録を積み重ねていくことをおすすめします。

事業専用の銀行口座

事業用と生活用のお金は、必ず分けましょう。

同じ口座を使っていると、どの入金や支出が事業に関係するものかを毎回確認する必要があり、記録の手間が大きくなります。後から見返したときにも分かりづらくなります。

事業専用の口座を用意しておけば、入金や支払いの履歴を見るだけで、事業のお金の流れを把握できます。会計ソフトと連携すれば、記録もスムーズになります。

開業したら、できるだけ早い段階で事業専用の口座を作りましょう。

事業専用のクレジットカード

経費の支払いは、事業専用のクレジットカードにまとめることをおすすめします。

生活用のカードと混ざっていると、明細の中から事業分だけを探す必要があり、手間がかかります。

また、事業用の支払いで付いたポイントは、事業に関係するものとして扱う必要があります。生活用の支払いと混ざらないように、事業専用のカードを使う方が管理しやすくなります。

事業専用カードを使えば、利用明細をそのまま記録に活用できます。会計ソフトと連携すれば、自動で取り込むことも可能です。

現金での支払いが多いと記録が煩雑になりやすいため、できるだけ事業用カードで支払う仕組みを作っておきましょう。

税理士に依頼するうえで気を付けたいこと

自分で申告をしない場合は、税理士を探す必要があります。
確定申告が近づいてから税理士を探すと選択肢が限られてしまうため、依頼するのであれば早めに動きましょう。

税理士を探すうえで注意したい点は、次の5つです。

・税理士探しの時期
・紹介会社を使うべきか
・税理士の費用の目安
・依頼前に整理しておきたいこと
・面談で確認すべきこと

税理士探しの時期

税理士を探すのであれば、6月から10月ごろがおすすめです。
12月から5月は、税理士が忙しくなる時期のためです。

・年末調整から個人の確定申告(12月~3月)
・法人の決算申告(特に3月決算が多く、4月~5月が繁忙期)

この時期は、事務所によっては新規の依頼を受けられないこともあります。

紹介会社を使うべきか

紹介会社を通して税理士を探す方法もあります。

ただし、紹介会社経由の場合、税理士側が紹介会社に手数料を支払う仕組みになっています。
そのため、お客様が支払う報酬のうち一部は紹介会社への手数料となります。

お客様としては十分な報酬を支払っているつもりでも、税理士側の手元に残る金額は少なくなることがあります。その結果、対応できる業務の範囲やサポート内容に差が出る可能性があります。

可能であれば、自分で複数の税理士を比較し、納得したうえで依頼することをおすすめします。

税理士の費用の目安

個人事業主で、税理士に見てもらう場合は、年間で16万円以上は見ておく必要があります。

・月額 1万円~
・確定申告 4万円~

これはあくまで最低限の金額です。
提案や継続的な相談を希望する場合は、これ以上の費用を想定しておきましょう。

最低限の報酬とは、「問題のない申告を行うための費用」と考えるのが適切です。

例えば、月額1万円の場合、税理士が確保できる時間には限りがあります。帳簿の確認や申告書の作成を行うだけで時間が埋まることもあり、個別の提案や細かな相談まで対応するのは難しくなる場合があります。

報酬が低い場合は、その分、対応範囲が限定される可能性があることも理解しておきましょう。

また、料金が安い場合には、次のようなことが起こりやすくなります。
すべての事務所に当てはまるわけではありませんが、報酬が低い場合は対応範囲が限定される傾向があります。

・担当者が頻繁に変わる
・帳簿の作成が十分に行われない
・返信が遅くなる

最初から税理士に依頼するのが難しい場合は、

・商工会議所などの相談窓口を利用する
・簿記の基礎を学ぶ

といった方法もあります。

ただし、一定以上の売上や所得がある場合は利用できないこともあるため、事前に条件を確認しておきましょう。

依頼前に整理しておきたいこと

税理士報酬は、業務量や責任の範囲によって決まります。
見積りを依頼する前に、次の点を整理しておきましょう。

・年間の売上見込み
・毎月の取引件数
・現在どのように記録しているか
・何を依頼したいのか

「何を依頼したいのか」の例としては、次のような点があります。

・記録作業も任せたいか
・相談は年に何回必要か
・各種届出も依頼したいか
・オンライン対応か、対面か

依頼内容があいまいだと、見積りにも差が出ます。あらかじめ整理しておくことで、無駄な行き違いを防ぐことができます。

また、税理士との関係は長期にわたることが一般的です。
お互いに信頼関係を築けるかどうかは、とても重要なポイントになります。

次のような行動は、税理士から敬遠されやすい傾向があります。

・資料の提出が遅い
・送られた連絡を読まない
・事実と異なる説明をする
・返信をしない
・約束を守らない
・急な連絡ばかりする

税務手続きには期限があります。
スムーズなやり取りができることは、とても重要です。

面談で確認すべきこと

費用も大切ですが、もっとも重要なのは相性です。

税理士は一度契約すると長い付き合いになります。
簡単に何度も変更するものではありません。

説明が分かりやすいか、質問しやすいか、信頼して任せられそうかといった点を確認しましょう。

おわりに

今回は、個人事業主向けに、開業時に早めに対応しておきたいことをまとめました。

開業直後は本業の準備で忙しくなりがちですが、手続きや日々の記録を後回しにすると、後で大きな負担になります。特に税務関係には期限があるため、早めの対応が重要です。

最初に仕組みを整えておけば、その後の確定申告もスムーズになります。
不安な点がある場合は、放置せず早めに確認・相談するようにしましょう。


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本記事は、2026年02月17日時点で入手できる情報をもとに作成しています。コンテンツの正確性・完全性についていかなる保証も行いません。サイトの内容を利用して生じたいかなる損害についても、当方は一切の責任を負いません。ご利用は利用者ご自身の判断と責任において行ってください。

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この記事を書いた人

新米税理士です。お客様に役立つ会計・税務情報をお届けできるよう、日々AIやITを活用しながら業務に励んでいます。

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