75万円の青色申告特別控除を受けるには届出が必要?令和9年分の確定申告に向けた注意点

75万円の青色申告特別控除を受けるには届出が必要?令和9年分の確定申告に向けた注意点

「簡易簿記による10万円の青色申告特別控除を適用している皆様へ」という国税庁の資料を見て、令和9年分の確定申告から、65万円の青色申告特別控除の要件電子帳簿に対応していれば75万円の青色申告特別控除を適用できるのではないかと考えていました。

しかし、調べていくと、電子帳簿に対応しているだけでは足りず、75万円の青色申告特別控除の適用を受ける旨の届出書の提出が必要などの要件を満たす必要があることが分かりました。

そのため、75万円控除を受けたい場合には、帳簿の作成方法だけでなく、届出の有無や提出時期についても確認しておく必要がありそうです。

今回は、2026年7月10日時点で入手できる情報をもとに、令和9年分の確定申告に向けてどのような対応が必要になりそうか、また、どのような点に注意が必要かを整理します。

結論から述べると以下になります。

・75万円の青色申告特別控除を受けたい場合は、改正後の65万円控除の要件と、一定の要件を満たす優良な電子帳簿を作成・保存するほか、届出も必要になります。

・令和7年分の売上が1,000万円以下で、10万円の青色申告特別控除を受けている方には、大きな影響はないと考えられます。

・令和7年分の売上が1,000万円を超える方は、青色申告特別控除を受け続けるために、複式簿記+e-Taxでの申告を検討する必要があります。

それでは本編へ

目次

この記事の対象者

この記事は、主に次の方を対象にしています。

・簡易簿記で10万円の青色申告特別控除を受けている方
・令和7年分の売上が1,000万円を超える可能性がある方
・令和9年分から75万円の青色申告特別控除を検討している方

すでに複式簿記で記帳し、e-Taxで申告して65万円控除を受けており、75万円控除を検討していない方については、この記事の内容はあまり関係しないかもしれません。

一方で、現在65万円控除を受けている方であっても、75万円控除を受けたい場合には、優良な電子帳簿への対応や届出が必要になるため、確認しておいた方がよいと考えられます。

図にすると以下のようになります。

10万円控除・55万円控除はどう変わるのか

現在、簡易簿記で帳簿を作成している場合でも、青色申告特別控除として10万円の控除を受けることができます。

しかし、令和8年度税制改正により、令和7年分の売上が1,000万円を超える場合には、令和9年分から10万円の青色申告特別控除を受けられなくなる可能性があります。

ここでいう簡易簿記とは、収入や経費を比較的簡単な方法で記録する帳簿の作成方法です。

一方、複式簿記とは、取引を借方・貸方に分けて記録し、最終的に貸借対照表と損益計算書を作成できるようにする帳簿の作成方法です。

そのため、10万円控除から65万円控除や75万円控除を目指す場合には、帳簿の作成方法そのものを見直す必要があります。

簡易簿記による10万円の青色申告特別控除を適用している皆様へより引用

現在10万円控除を受けていて、令和7年分の売上が1,000万円を超えている、または超える可能性がある場合には、次のような対応を考えておく必要があります。

・複式簿記+e-Taxを導入する
・青色申告特別控除以外の青色申告の特典を利用する

また、55万円控除についても見直しが予定されています。

現行の55万円控除は、複式簿記による記帳を行い、貸借対照表と損益計算書を添付して期限内申告をした場合に適用される控除です。

令和8年度税制改正大綱では、この55万円控除について、複式簿記による記帳に加えて、e-Taxによる申告を適用要件としたうえで、控除額を65万円に引き上げることが示されています。

そのため、実質的には、現行の55万円控除はなくなり、改正後は65万円控除に置き換わることになると考えられます。

さらに、現行の65万円控除についても、一定の要件を満たす優良な電子帳簿などの要件が追加されたうえで、75万円控除に引き上げられる予定です。

75万円控除については、後ほど詳しく整理します。

75万円控除に関係する電子帳簿保存のルール

75万円控除を受けるためには、一定の要件を満たす電子帳簿を作成・保存する必要があります。
その前提として、まずは電子帳簿保存法における基本的な保存方法を確認します。

電子帳簿保存法というと難しく感じますが、簡単にいうと、次のようなイメージです。

・紙でもらったものは紙で保存
・電子でもらったものは電子で保存
・紙でもらった書類をスキャナ保存により電子保存することも可能

電子帳簿保存法が改正されましたより引用

現在、電子取引で受け取った請求書や領収書などのデータについては、電子データのまま保存する必要があります。

一方で、紙でもらった請求書や領収書については、紙のまま保存することもできますし、スキャナ保存の要件を満たしたうえで電子保存することもできます。

また、75万円控除についても、紙でもらった請求書や領収書をスキャナ保存することまでは要件とされていません。

今回の75万円控除で問題になるのは、帳簿そのものについて、一定の要件を満たした優良な電子帳簿として作成・保存されているかどうかです。

75万円控除を受けるために必要な対応

令和8年度税制改正大綱では、青色申告特別控除について、55万円控除や65万円控除の見直しとあわせて、一定の要件を満たす場合に控除額を75万円に引き上げることが示されています。

75万円の青色申告特別控除を受けるには、ざっくりいうと次の対応が必要になると考えられます。

・改正後の65万円控除の要件(複式簿記により記帳し、e-Taxにより申告すること)を満たすこと
・一定の要件を満たす優良な電子帳簿を作成及び保存すること
・75万円の青色申告特別控除の適用を受ける旨の届出書を提出すること
・税務調査時に帳簿データの提示又は提出を求められた場合には、その求めに応じること

つまり、電子帳簿に対応していれば自動的に75万円控除を受けられる、というわけではなさそうです。

特に注意が必要なのは、届出書です。

75万円控除を受けるためには、帳簿の作成方法だけでなく、所定の届出書を提出しているかどうかも確認する必要があります。

また、一定の要件を満たす優良な電子帳簿とは、例えば次のような要件を満たす帳簿をいいます。

・訂正削除履歴を確認できること
・帳簿間の相互関連性があること
・検索機能があること

これらの機能については、主要な会計ソフトであれば、優良な電子帳簿の要件に対応している可能性は高いと考えられます。

例えばfreeeでは、優良電子帳簿機能を有効にして記帳することで、freee会計で作成する帳簿を優良電子帳簿として保存できるとされています。

優良な電子帳簿とは(freeeヘルプセンター)
https://support.freee.co.jp/hc/ja/articles/11680857183897

メリット

75万円控除に対応するメリットは、主に次の2つです。

・75万円の青色申告特別控除を受けられる
・電子帳簿保存法上の重加算税の10%加重措置の対象外になる

一番分かりやすいメリットは、青色申告特別控除の金額が75万円になることです。

これまで65万円控除を受けていた方であれば、控除額が10万円増えることになります。

また、一定の要件を満たした優良な電子帳簿として保存している場合には、電子帳簿保存法上の重加算税10%加重の対象外になる可能性があります。

ただし、これは重加算税そのものがかからなくなるという意味ではありません。

あくまで、電子帳簿保存法に関する重加算税の10%加重部分についての話です。

デメリット・注意点

一方で、75万円控除を受けるためには注意点もあります。

・税務調査時に帳簿データの提示又は提出を求められる可能性がある
・使用している会計ソフトやシステムが要件を満たすか確認する必要がある

電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則第2条第2項第3号では、税務調査時に帳簿データの提示又は提出を求められた場合には、その求めに応じることができるようにしておく旨が規定されています。

国税に関する法律の規定による当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の提示又は提出の要求に応じることができるようにしておくこと。

電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則第2条第2項第3号

これまでは、税務調査時に帳簿データの提供を求められても、任意での対応となる場面が多く、データの提供を断ることもありました。

しかし、75万円控除を受ける場合には、制度を理解したうえで、自ら適用を受ける旨の届出書を提出することになります。

この届出書の提出が求められているのは、75万円控除というメリットを認める一方で、税務調査時には帳簿データの提示又は提出に対応できる状態にしておくことを求める趣旨もあると考えられます。

そのため、75万円控除を受ける場合には、単に控除額が増えるというメリットだけでなく、帳簿データを適切に保存し、必要に応じて提示又は提出できる状態にしておく必要があります。

届出書の書き方

75万円控除を受けるためには、「75万円の青色申告特別控除の適用を受ける旨の届出書」等の提出が必要になると考えられます。

国税庁の手続案内でも、優良な電子帳簿の保存により75万円の青色申告特別控除の適用を受けようとする場合には、次のいずれかの届出書を、適用を受ける年分の確定申告期限までに、所轄税務署へ提出するよう案内されています。

例えば、令和9年分の確定申告であれば、令和10年(2028年)3月15日までに提出する必要があります。

  • 国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等に係る75万円の青色申告特別控除・過少申告加算税の特例の適用を受ける旨の届出書
  • 国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等に係る過少申告加算税の特例の適用を受ける旨の届出書
優良な電子帳簿の保存又はデジタルシームレス保存により75万円の青色申告特別控除を適用しましょう!より引用

今回は、令和8年分の確定申告分について、「国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等に係る65万円の青色申告特別控除・過少申告加算税の特例の適用を受ける旨の届出書」を例に、記載要領に沿って記入してみます。

記載要領に沿って記入すると、以下のようになると考えられます。

国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等に係る65万円の青色申告特別控除・過少申告加算税の特例の適用を受ける旨の届出書

75万円控除を受けるための手続きは、令和10年3月15日までに提出すればよいため、現時点で、急いで提出する必要はありません。

メリット・デメリットを理解したうえで、75万円控除を受けるかどうかを検討するとよいと考えられます。

まとめ

令和9年分から、青色申告特別控除の取扱いが変わる予定です。

令和7年分の売上が1,000万円以下で、簡易簿記により10万円控除を受けている方については、大きな影響はないと考えられます。

一方で、令和7年分の売上が1,000万円を超える方については、これまでどおり10万円控除を受け続けることができない可能性があります。

その場合には、複式簿記+e-Taxでの申告を検討する必要があります。

さらに、75万円控除を受けたい場合には、複式簿記やe-Taxだけでなく、一定の要件を満たす優良な電子帳簿の作成及び保存、届出書の提出、税務調査時の帳簿データの提示または提出への対応も必要になります。

75万円控除はメリットもありますが、対応すべき事項も増えます。

そのため、令和9年分の確定申告に向けて、令和8年中に自分がどの控除を目指すのかを整理しておくのがよいと考えられます。

おわりに

今回は、2026年7月10日時点で入手できる情報をもとに整理しました。
今後、税制改正の詳細が明らかになり次第、内容を更新していく予定です。

税理士事務所HRTでは、freeeを利用した帳簿作成や青色申告特別控除の対応についてもご相談いただけます。


免責
本記事は、2026年7月10日時点で入手できる情報をもとに作成しています。コンテンツの正確性・完全性についていかなる保証も行いません。サイトの内容を利用して生じたいかなる損害についても、当方は一切の責任を負いません。ご利用は利用者ご自身の判断と責任において行ってください。

参考文献

国税庁HP

簡易簿記による10万円の青色申告特別控除を適用している皆様へ
電子帳簿保存法が改正されました
青色申告特別控除(優良な電子帳簿の保存又はデジタルシームレス保存により75万円の青色申告特別控除を適用しましょう!)
国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等に係る65万円の青色申告特別控除・過少申告加算税の特例の適用を受ける旨の届出手続

財務省HP

令和8年度税制改正の大綱(令和7年12月26日閣議決定)

freeeヘルプセンター

優良な電子帳簿とは

法令

電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則 第2条第2項第3号

   以下よりメール相談が可能です 

お問い合わせ
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

新米税理士です。お客様に役立つ会計・税務情報をお届けできるよう、日々AIやITを活用しながら業務に励んでいます。

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次