事業を行っていると、資材や商品を運搬するために、トラックなどの事業用車両を購入することがあります。
このとき、販売店に支払った金額のすべてを、そのまま「車両運搬具」として処理している方もいるかもしれません。
しかし、支払った金額のすべてを「車両運搬具」として処理するのは適切ではありません。
なぜなら、購入代金には車両本体のほかに、税金・保険料・登録費用・リサイクル預託金などが含まれていることがあり、それぞれ内容に応じて処理を分ける必要があるためです。
この記事では、事業用のトラックを購入した場合を例に、購入時の主な注意点をわかりやすく解説します。
なお、本記事は、所得税・法人税における経理処理を中心に解説しています。
消費税の取扱いについては取り上げていません。
それでは、本編へ。
支払総額を項目ごとに分ける
車両本体の購入代金は、原則として「車両運搬具」として固定資産に計上します。
固定資産の取得価額には、車両本体の購入代金だけでなく、その車両を購入するために要した費用や、事業で使用するために直接要した費用も含まれます(所得税法施行令第126条第1項第1号、法人税法施行令第54条第1項第1号)。
そのため、
「トラックを購入して300万円支払ったので、300万円をすべて車両運搬具にする」
という処理ではなく、まず購入明細の内容を確認することが大切です。
主に確認したい項目は、次の5つです。
| No | 確認したい項目 | 主な処理科目 |
|---|---|---|
| ① | カーナビ・ETC・ドライブレコーダーなどの付属品 | 車両運搬具(原則) |
| ② | 登録関係の費用 | 一定のものは経費処理も可 |
| ③ | 自動車重量税 | 租税公課 |
| ④ | 自賠責保険料 | 保険料(前払費用に注意) |
| ⑤ | リサイクル預託金 | 預託金(資産) |
それぞれの処理について解説します。
カーナビ・ETC・ドライブレコーダーなどの付属品
トラックの購入時に、次のような機器を取り付けることがあります。
- カーナビ
- ETC
- ドライブレコーダー
- バックモニター
車両に常時搭載して使用する機器については、原則として車両と一括して耐用年数を適用します。
国税庁も、車両に常時搭載するラジオ・無線通信機器・クーラーなどについて、車両と一括して耐用年数を適用する取扱いを示しています(耐用年数の適用等に関する取扱通達 第2章第5節「車両及び運搬具」2-5-1)。
そのため、トラックの購入時に取り付けたカーナビやETC、ドライブレコーダーなどは、原則として車両の取得価額に含めて処理します。
一方、車両を購入した後に、別途カーナビなどを購入した場合は、購入時とは少し考え方が異なります。
- 車両に常時取り付け、車両と一体として使用するもの
→ 車両に対する資本的支出として処理する場合があります。 - ポータブルナビなど、独立して使用・取り外しができるもの
→ 「工具器具備品」などの別資産として処理できる場合があります。
「資本的支出」とは?
所得税法施行令第127条、法人税法施行令第55条を元に記載
かかった費用をその年の経費にまとめて計上するのではなく、車両本体と同じ年数をかけて、少しずつ経費にしていく(減価償却する)処理のことです
このように、カーナビなどの付属品については、車両への取り付け方や使用方法によって処理が異なる場合があるため注意が必要です。
登録関係の費用
車両を購入すると、登録のための費用なども発生します。
登録免許税その他の登録に要する費用については、車両の取得価額に含めず、その期の経費にすることができます(所得税基本通達49-3、法人税基本通達7-3-3の2)。
購入明細に登録関係費用が記載されている場合には、車両本体と分けて内容を確認し、取得価額に含めるか、その期の経費として処理するかを検討します。
自動車重量税
自動車重量税は、自動車の新規登録や車検の際に、車両の重量等に応じて課税される税です。
国税庁の「令和7年分 収支内訳書(農業所得用)の書き方」でも、自動車重量税は「租税公課」の具体例として示されています。
車両本体とは分けて 「租税公課」 などで処理します。

自賠責保険料
自賠責保険料(中古車購入時の未経過自賠責保険料相当額を除きます)については、車両本体とは分けて 「保険料」 として処理します。
保険期間が決算日をまたぐ場合には注意が必要です。
前払費用は原則として、まだ保険期間が経過していない部分を資産として計上し、期間の経過に応じて費用化します。
ただし、支払日から1年以内に役務の提供を受ける短期前払費用については、継続して同じ処理をすることなどを条件に、支払時に費用とする取扱いも認められています(所得税基本通達37-30の2、法人税基本通達2-2-14)。
そのため、保険期間が支払日から1年を超える自賠責保険料については、短期前払費用の取扱いの対象とならないため、決算時に未経過期間に対応する部分を「前払費用」として計上します。
※ 会計上、金額的な重要性が乏しい場合には、重要性の原則により前払費用として区分せず、支払時に一括して費用処理することもあります(継続適用が前提)。
リサイクル預託金
購入代金の中にリサイクル預託金が含まれている場合には、車両本体とは分けて処理します。
リサイクル預託金は、将来自動車を廃車する際のリサイクル費用として、あらかじめ預託しているものです。
したがって、支払時に費用として計上するのではなく、「預託金」などの資産として計上します。
※ リサイクル料金のうち「資金管理料金」は、厳密には預託金ではなく支払時の経費(支払手数料など)です。ただし金額が少額のため、実務上は預託金に含めて処理することもあります。
購入費用まとめ(仕訳例)
ここまでのことをまとめると、仕訳は以下のようになります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 車両運搬具(資産) | 850 | 現金預金 | 1,000 |
| 租税公課(経費) | 50 | ||
| 保険料(経費)・ 前払費用(資産) | 50 | ||
| 預託金(資産) | 50 |
同じ「トラック購入」でも、支払総額をそのまま車両運搬具にする場合と比べて、この例では租税公課や保険料をその年の経費として計上できるため、その年の経費になる金額が多くなります。
購入方法によって処理が変わるケース
新車を現金預金で一括購入した場合は、上のような処理で問題ないと考えられます。
ただし、以下のような場合は注意が必要です。
- 銀行借入で購入した場合
- ローン(残価設定型クレジット等)で購入した場合
- 下取り車がある場合
なお、ここからは購入方法による違いをわかりやすくするため、租税公課や保険料などの付随費用がないもの(購入代金がすべて車両運搬具になるもの)として、仕訳を単純化して解説します。
銀行借入で購入した場合
トラックを銀行借入で購入した場合には、車両代金と借入の返済を分けて考えます。
購入時には、前述のとおり購入明細の内容に応じて「車両運搬具」や経費などに分けて計上し、その代金について借入金を計上します。
その後の返済時には、次のように処理します。
- 元本部分 → 借入金の返済
- 利息部分 → 支払利息
※使用開始前の期間に対応する借入金利息は、車両の取得価額に含めることもできます。
仕訳例
借入時:
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金預金 | 1,000 | 借入金 | 1,000 |
購入時:
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 車両運搬具 | 1,000 | 現金預金 | 1,000 |
返済時:
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 借入金 | 100 | 現金預金 | 105 |
| 支払利息 | 5 |
ローン(残価設定型クレジット等)で購入した場合
トラックをローンで購入した場合、契約上、車両の購入代金と割賦利息が明確に区分されているかによって処理が変わります。
- 明確に区分されていない場合
→ 割賦利息を含めた金額を車両の取得価額として計上します。 - 明確に区分されている場合
→ その利息部分を車両の取得価額に含めないことが認められています(所得税基本通達37-28、法人税基本通達7-3-2)。
仕訳例(明確に区分されていない場合)
購入時:
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 車両運搬具 | 1,100 | 未払金 | 1,100 |
返済時:
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 未払金 | 110 | 現金預金 | 110 |
仕訳例(明確に区分されている場合)
購入時:
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 車両運搬具 | 1,000 | 未払金 | 1,000 |
返済時:
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 未払金 | 100 | 現金預金 | 105 |
| 支払利息 | 5 |
下取り車がある場合
新しいトラックを購入するときに、現在使用している車両を下取りに出すこともあります。
この場合、単純に
「新しい車両の金額 - 下取り金額」
が新しい車両の取得価額になるわけではありません。
下取りは、古い車を売った扱いになるからです。
そのため、
- 新しい車両の購入
- 古い車両の売却
を分けて考える必要があります。
また、個人事業主の場合には、事業用の車両を売却したとしても事業所得ではなく、原則として譲渡所得の計算が必要となるため注意が必要です。
事業所得の計算に含めないようにするためには「事業主貸」等を使い、譲渡所得への振替の処理を行います。このとき、「車両運搬具」だけではなく、預託金についても同様の処理をします。
仕訳例(車両の帳簿価額100、リサイクル預託金5、下取り額105の場合)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 事業主貸 | 100 | 車両運搬具 | 100 |
| 事業主貸 | 5 | 預託金 | 5 |
なお、年の途中で車両を売却した場合、売却時までの減価償却費については、譲渡所得の取得費に反映させる代わりに、その年の事業所得の必要経費として計上することもできます(所得税基本通達49-54)。
中古トラックを購入する場合の注意点
上記の処理は、新車を前提として記載していました。中古で車両を購入する場合には、次の点に注意が必要です。
未経過自賠責保険料相当額・未経過自動車税相当額について
中古車を購入する際には、「未経過自動車税相当額」や「未経過自賠責保険料相当額」が請求されることがあります。
これらは、買主が自治体や保険会社に直接支払うものではなく、販売店に対して支払うものです。つまり、自動車税や自賠責保険料そのものを支払っているのではなく、その未経過分に相当する金額を、売主と買主との間の利益調整として支払っているものと考えられます。
国税庁は、消費税の質疑応答事例において、未経過自動車税相当額について、未経過期間も継続して乗用できる中古車の購入代金の一部として支払うものと説明しており、未経過自賠責保険料相当額についても同様の取扱いとしています。
そのため、これらの金額については、「租税公課」や「保険料」として経費計上するのではなく、車両の購入代価の一部として「車両運搬具」の取得価額に含めて処理します。
購入した減価償却資産は、原則として購入代価等を取得価額とする考え方です。
減価償却について
中古のトラックを購入した場合、新車と同じ法定耐用年数をそのまま使用するとは限りません。
中古資産については、使用可能期間を見積もって耐用年数を設定する方法のほか、使用可能期間を見積もることが困難な場合には、簡便法によって耐用年数を計算することができます。
中古車の場合には、購入金額だけでなく、年式や経過年数も確認しておく必要があります。
まとめ
事業用のトラックを購入した場合には、販売店への支払総額をそのまま「車両運搬具」として処理するのではなく、購入明細を確認することが重要です。
主な処理を整理すると、次のようになります。
| 項目 | 処理 |
|---|---|
| 車両本体 | 車両運搬具(資産計上) |
| カーナビ・ETC・ドラレコ等 | 原則として車両の取得価額(資産計上) |
| 登録関係費用 | 一定のものは取得価額に含めず費用処理可能 |
| 自動車重量税 | 租税公課(経費計上) |
| 自賠責保険料 | 保険料(必要に応じて前払費用) |
| リサイクル預託金 | 預託金等(資産計上) |
| 銀行借入の元本 | 借入金の返済 |
| ローンの元本 | 未払金等の返済 |
| 借入金の利息・ローンの利息 | 支払利息等 |
| 下取り車 | 車両の売却として別途処理(個人事業主の場合は譲渡所得) |
| 中古車 | 未経過自動車税相当額等や耐用年数を確認 |
特にトラックなど金額の大きな車両を購入した場合には、購入時の処理によって減価償却費やその年の経費の金額も変わるため、明細を確認したうえで処理する必要があります。
おわりに
事業用のトラックを購入した場合には、車両本体以外にも、登録費用や税金、保険料、リサイクル預託金など、さまざまな項目が含まれています。
また、銀行借入やローン、下取り、中古車の購入など、購入方法や車両の状態によっても処理が変わります。
購入代金をそのまま「車両運搬具」として処理するのではなく、まずは購入明細や契約内容を確認し、それぞれの項目に応じて処理することが大切です。
金額の大きな車両ほど、処理方法によってその年の経費や減価償却費にも影響するため、購入時に内容を整理しておきましょう。
参考文献
所得税法施行令第126条、第127条
法人税法施行令第54条、第55条
所得税基本通達37-28、37-30の2、49-3、49-54
法人税基本通達2-2-14、7-3-2、7-3-3の2
耐用年数の適用等に関する取扱通達 第2章第5節「車両及び運搬具」2-5-1
国税庁「令和7年分 収支内訳書(農業所得用)の書き方」
国税庁「消費税の質疑応答事例」


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